門外不出の「日本丸模型」寄贈 旧市川造船所、伊勢市に貴重資料数百点 三重

【寄贈資料の「日本丸模型」の前で鈴木健一市長(左)に目録を手渡す竹中さん=伊勢市岩渕のいせ市民活動センターで】

【伊勢】かつて造船の町として栄えた三重県伊勢市大湊地区にあった市川造船所(1702―1978年)にまつわる資料が18日、伊勢市に寄贈された。

市川造船所は1702年の創業とされ、早くから西洋式船の造船技術を導入し、日本初のエンジン付き漁船を造るなど、近代造船史に名を残す船を数多く手がけた。

寄贈されたのは、創業家、市川家の本宅(同市大湊町)に所蔵されていた船舶模型や造船の古文書などで、数百点に上る。14代目社長の故市川明氏のめいにあたる竹中悦子さん(70)=同市小俣町=が贈った。

寄贈資料には、豊臣秀吉が朝鮮出兵(1592年)の際、大湊で造らせたという軍船「日本丸」の装飾品とみられる「伝日本丸金箔(きんぱく)板戸」や「伝日本丸螺鈿欄干」などが含まれる。

【日本丸の装飾品とみられる「伝日本丸金箔板戸」などの展示=伊勢市岩渕のいせ市民活動センターで】

また、昭和初期に市川造船所で製作された「日本丸模型」(30分の一スケール)も注目される。木製で全長約1・2メートル。鳥羽商船高専名誉教授で伊勢市造船資料保存調査員の伊藤政光さんによると、日本丸の図面は残っていないため、当時市川造船所が、文書資料や絵図などを参考に設計図を作り、船大工らが、外形だけでなく内部の構造や内装まで精密に再現した。各地に残る日本丸の模型の中で最も古く、精密で貴重だという。

同市岩渕のいせ市民活動センターであった寄贈式で、竹中さんは「日本丸(模型)は門外不出という叔父の言葉を守り、保存に努めてきた。大湊が造船の町だったこと、市川造船所の歴史を若い世代に伝えたい。その思いを日本丸に乗せて寄贈したい」と話した。

寄贈資料のうち「日本丸模型」、「伝日本丸金箔板戸」など5点は、いせ市民活動センターで29日まで展示されている。