伊勢新聞

妖刀伝説の真偽に迫る 桑名で名古屋城調査研究センターの原さん講演会 三重

【歴史愛好家や刀剣ファンを前に講演する原さん(左後方)=桑名市中央町の市パブリックセンターで】

【桑名】徳川将軍家に災いをもたらすといわれる「妖刀村正」。この妖刀伝説の真偽に迫る歴史講演会がこのほど、三重県桑名市中央町の市パブリックセンターであった。徳川家の歴史に詳しい名古屋城調査研究センターの原史彦さんが「妖刀村正伝説と神君神話」と題して講演した。

「村正」は、16ー17世紀に伊勢の桑名(桑名市)で作られた日本刀。切れ味の良い実用的な刀として、多くの戦国武将に愛用された。家康の祖父は村正で殺害され、父も負傷し、家康自身もけがをした。息子が切腹の際に使った介錯刀も村正だった。

「徳川家をたたる妖刀」とされる村正だが、かつて徳川美術館(名古屋市)の学芸員を務めていた原さんは、この妖刀伝説を否定する論文を発表している。原さんは、資料や写真を見せながら解説。妖刀伝説は家康を神格化する上で「実の息子を切腹させたという汚点を糊塗(こと)するため、村正のせいにしたのではないか」と述べた。家康本人は村正を所持し続け、尾張徳川家に遺産として譲っていることから「家康の死後に徐々に作られていったのでは」と推測した。

講演会は桑名市にまつわる歴史を知ってもらおうと、北勢地域の歴史愛好家でつくる「北伊勢歴史研究会」と同市の「お茶カフェ茶輪(さわ)」などで構成する「桑名イベント実行委員会」が開いた。県内外から集まった歴史愛好家や刀剣ファン約120人が耳を傾けた。