伊勢新聞

2024年1月16日(火)

▼岸田内閣の支持率が、共同通信社の13、14日の全国電話世論調査で案の定、少し上昇した。大災害にリーダーへの期待が集まるのは当然ということを割り引くと3回連続の20%台の27%という数字は予断を許さない。せっかくの震災地への初視察があまり評判はよくないらしい

▼被災から13日後の視察に「今更何をしに」という被災者からの厳しい批判もあったという。首相は4日に早期の現地入りを明言している。それから10日後の実行では、被災者の期待に肩すかしを食らわせたばかりでなく、後手後手の岸田政権を連想した向きも少なくなかったのではないか

▼首相の現地視察に異論があることは確かだ。東日本大震災での原発事故で視察を強行した菅直人首相(当時)に、現場の作業員らは首相対応を強いられて迷惑、との不満が高かったとされる。警備や受け入れ態勢が整わないなどの慎重論が首相周辺に多かったことは想像できる

▼それら障壁を岸田文雄首相は押し切ることができなかったこともまた意味する。進まないインフラ工事の復旧を見て、国が代行できる大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定する考えを示したというのも歯がゆい

▼現地のわずかな動きも直ちに官邸に報告されると伊勢志摩サミットでは言われていた。必要な指定は事前に用意して現地入りすることはできなかったのか。首相の必死度が問われる

▼裏金問題や賃上げなど、何もかも悲観的見方が漂う中で、首相辞任を望む回答が8割強というのは、国民にとっても不幸な現実である。