北勢の私立高に通っていた女性(19)が在学時、同級生の男子生徒=当時=から性的被害を受けたとされる問題。同校は先月、いじめ防止対策推進法に基づく第三者委員会の設置を決めた。この第三者委が今後、事実関係などを調べる見通しだ。一方、女性が被害への対応を巡って信頼を寄せたのは、三重県外の支援団体だけ。学校側は当初、女性が要望した調査委の設置を拒んでいたほか、女性から相談を受けた警察や県の犯罪被害者支援組織も十分に機能していたとは言えない。
女性側によると、女性は高3だった令和4年の8―11月、同級生の男子生徒から少なくとも20回、望まない性的な行為をされた。現場は駐車場や公園など、人通りのある場所も含まれる。
また、この行為の詳細やLINEでの個人的なやりとりを、共通の知人を含むSNS(交流サイト)で拡散された。女性は再三にわたってやめるよう求めたが、応じてもらえなかったという。
女性は男子生徒と交際関係にあったが、あくまで「登下校を共にする程度」の認識。男子生徒からは「人に話したり、相談してはいけない」などと繰り返して言われていたという。
女性が4年11月、両親に打ち明けたことをきっかけに一連の被害が発覚。両親から連絡を受けた学校は男子生徒らに聞き取りを実施し、この男子生徒を自宅謹慎・停学処分にしたという。
一方、女性は高校卒業後の昨年9月、第三者委を設置するよう複数回にわたって要望したが、学校は「教育的行為とは関係のない生徒間の男女問題」などとし、要望には応じてこなかった。
ただ、学校は先月になって方針を転換し、設置を決めた。女性側の要望を受けた県私学課が学校に「助言」した結果とされるが、女性は「なぜ今になって設置を決めたのか」と不審がる。
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この間、女性は学校だけとやりとりをしていたわけではない。4年11月には被害届を提出しようと、両親らに付き添われて県内の警察署を訪れ、女性署員に被害を訴えたという。
ただ、この署員は「明確に拒否しなかったのなら同意。交際関係にある中でのことなので同意」などと答え、被害届は受理せず。女性は泣いて話せなくなり、その場を退室した。
県の性犯罪被害者支援センター「よりこ」にも相談した。センターの対応者は「交際中でも同意がなければ性暴力」との姿勢だったが、聞き取りが中心で納得できる支援はなかったという。
女性側が最終的に頼ったのが、いじめの被害者を支援する都内の一般社団法人「ヒューマンラブエイド」。いじめの根絶に向けた活動で知り合った人に紹介されたことがきっかけだった。
女性は現在も不安を抱える。先月22日、母や支援者に付き添われて県庁で記者会見し、涙ながらに「とにかく謝ってほしい。同じような被害がない世の中になってほしい」と訴えた。
校長は取材に「できることを精いっぱいしている」と話し、今月中にも第三者委を設けると説明。女性に応対した警察署は当時の対応について「個別の事案には答えられない」としている。