伊勢新聞

2024年1月10日(水)

▼東京・羽田空港の滑走路上で日本航空機と衝突した海上保安庁の航空機の機長が「エンジン出力を上げて離陸走行中に衝撃を受けた」趣旨の説明をしていることが報じられた

▼事故後の聞き取りでは「他の乗組員らにも確認し、滑走路への進入許可を得たと認識していた」。日航機の着陸は「知らなかった」と説明していた。矛盾はない。公開されている管制官との交信記録などで滑走路進入や離陸の許可は出ていなかったことがわかっているが、ほかの飛行機が降りてくるなど脳裏の片隅にもなかったのだ

▼海保勤務が長い一見勝之知事は、後輩の事故をどう見ているのか。能登半島沖地震の被災地支援に取り組んでいるが、その救援活動の中で起きた事故への言及はない。専門家として、救援活動を進める部下らに伝えておくことはないのか

▼知事は5日の職員への年頭のあいさつで、年始も被災地支援に当たった職員に感謝するとともに、物的支援で「県の備蓄庫は空になった」ことを報告。自分が決めたのではなく「追認」だったとして「職員の決定を聞き、うれしい気持ちになった」と語った

▼大事な備蓄庫を空にするのに最高責任者の承諾を採らなかったのは聞きようによっては違和感がある。今回は「うれしいこと」かもしれないが、許可を取らずに進めて問題になったことは、これまで少なくない

▼部下が大事な決定を事後承諾にするのが海保の習慣でもあるまいが、部下が必ず責任者に報告して責任者が復唱していれば、思い込みで滑走路へ進入することは防げた気はする。