伊勢新聞

2024年1月5日(金)

▼新しい年もはや5日を過ぎたが、年が変わって変わったと言えば、自民党の資金集めパーティーに伴う裏金問題がパタリと報道されなくなったことだ

▼やむを得ない。石川県能登半島を襲った震度7の地震と津波で同県の死者は73人を超え、行方不明者の生存ラインとされる72時間が迫る中、懸命の捜索が続く。そのさなかの二日、羽田空港で発生した日航ジャンボ機と海上保安庁の飛行機の衝突炎上。海保の隊員五人が死亡し、原因究明が進む。裏金問題はしばし後方へ追いやられた格好だ

▼報道機関の張り込みや不祥事追求をかわす手段として、政治家がよく指摘するのは別のネタを与えてやること。たちまち矛先を変えてそちらに向かってしまう。後先考えずに突進する軽薄者と言われているようで不快だが、真剣に渡り合ってきた政治家ならではの体験的真実ということでもあろう。思い当たるところ、なしとはしない

▼能登半島地震は、異常気象や温暖化とは別に、災害大国日本を改めて思い知らされた。日航機と海保機の衝突は、安全確保や危険予知の決め手として工場や危険な現場に広く採用されている「指差喚呼」が、必ずしも絶対ではないことを教訓として残した

▼人間の勘違い、思い違いは必ずある。絶え間ない改善を繰り返す以外に防ぐことはではない。被災者救助の先頭に立つと宣言する岸田文雄首相にもまた、何度目かの支持率回復のチャンスが訪れたことは間違いない

▼政界天気図がどう動いていくのか。激動の年の幕開けと言えるのかもしれない。