児童数減少に伴う三重県鈴鹿市南部地域の市立天栄中学校区における学校再編について、末松則子市長は12月25日の定例記者会見で「計画通りの内容で決定した」と発表した。今後、具体的な議論が進む。地域の意見を反映させるために、末松市長は「個人的には対応窓口が必要と考えている」との考えを示したほか、「これまで以上に不安や疑問の解消につとめていく」と話した。
同再編計画は27日、市教委ホームページで公表した。
学校再編は市で初の事業として、令和元年度から取り組みを進めてきたが、ことしに入って地域の一部から計画に反対する声や「説明が不十分」とする声が上がった。今後、さらなる情報発信の充実や地域との連携が、円滑に事業を進めていくための重要な課題の一つになる。
同中学校区には天名、合川、郡山、栄の4小学校があり、そのうち合川小では令和6年度、天名小では令和8年度から、2つ以上の学年をひとまとめにして一つの学級に編成する「複式学級」が発生する見込み。
再編計画では複式学級回避のため、栄小を除いた3小学校を統合した「新たな小学校」の令和8年度開校を経て、令和14年度を目途に「新たな小学校」と栄小、天栄中の児童生徒を対象にした小中一貫の「義務教育学校」開設を目指す。
施設一体型の義務教育学校では、9年間を見通した教育課程を編成することで、近隣高等教育機関との連携による先進的な取り組みの推進や、特色ある教育活動の展開などを通じた地域活性化が期待できるという。
9月1日、3小学校の統合に反対する地元の保護者らによる「小学校を存続させる3地区の会」(畑憲二代表世話人)は、統合の白紙撤回を求める要望書と1468人分の署名簿を末松市長に提出。
要望書と署名簿を受け取り、末松市長は「署名は重く受け止める。地域によっても賛成、反対の意見はさまざまあるが、パブコメを含めてしっかり意見を聞き、市教委と検討する」、廣田隆延教育長は「社会が激変する中、ある程度の集団の中で切磋琢磨(せっさたくま)しながら子どもたちの生きていく力をつけるのが市教委の意見」とそれぞれ話した。
同月9日、同市秋永町の市立天栄中学校で市教委による説明会があり、87人が参加。参加者からは「複式学級が悪いというイメージが植え付けられている」「子どもや保護者の声を聞いて決めたのか疑問」「反対意見が大きく取り上げられているが、決して地域の多数意見ではない」「統廃合せず義務教育学校を前倒ししてはどうか」などさまざまな意見が出された。
11月22日には、同中学校区の各自治会長18人と末松市長、廣田教育長らが意見交換した。参加者らは「反対派を無視するわけにはいかない。きっちり説明して納得してもらう必要がある。スピード感を持って情報発信してほしい」などの意見を述べ、三宅町東谷自治会の川村裕士自治会長(65)は「令和8年はもうすぐ。地元として市が円滑に進めていけるのかを心配している」と話した。
8月に公表した計画素案は、市議会や市民から出された意見を踏まえて見直した。基本的な方向性に変わりはないものの、さらなる情報発信に向けた取り組みなどを追加・修正し、今月18日の教育委員会定例会、19日の行政経営会議で審議。いずれも承認された。
12月14日の定例記者会見で、末松市長は「今までの手続きが不十分だったとは思っていないが、行政の思い込みも多々あり、もっと丁寧な説明が必要だった」と進め方に問題があったことを認めた。
その上で「存続派、推進派、反対派と地域の思いを分けるのではなく、地域が同じ方向を向ける道筋を作らなけばいけなかった」と振り返り、「反対派にも理解してもらえるよう努力していく」と話した。
地域の思いを受け止め、どうまとめていくのか、手腕が問われる。