伊勢新聞

2023年12月27日(水)

▼三重県職員が担当する業務の裏表から抜け穴まで実によく精通していることはたびたび思い知らされてきた。外部監査委員が県職員の脱法行為について、別のルールを作ってルール違反を乗り越えると指摘したのも、そうした慣行を踏まえればさほど奇異なことはない

▼それにしても、県企業庁発注の水道設備工事を巡る贈収賄事件は、五里霧中から急転直下の感がある。犯行の態様や罪状などは不明点や疑問が多いが、贈収賄を構成する基本的金銭授受は、これまで伝えられていた“約束”から具体的に現金がやりとりされていたことがはっきりした

▼金銭授受が明確な以上、それ以外の方法論や解釈などは枝葉の問題に過ぎまい。公共事業で、県職員やOBが金銭の見返りに特定の企業に便宜を図っていいはずがない。県は県OBが贈賄側の建設工事会社社長から200万円を受け取り、うち100万円を協力した現職員に渡したとして、現職員を懲戒免職処分にした

▼別に技術指導1回につき数万円を受け取っていたという。県の聞き取りに「自分の実力を試したかった。(現金は)老後の備えにしたかった」などと話しているという。理屈とこう薬はどこにでも付く。退職金を棒に振って老後の備えもへちまもない

▼OBの方は「在職中にお金をもらわければ罪にはならないと思った」。確信犯だ。抜け穴をすり抜けてきた長年の知恵だろう。「助言や指導ができるようになれば将来役に立つと考えた」。危うい綱渡りは承知の上だろう

▼県は退職金の全額返還命令を検討という。従わなくてもいいと確信しているに違いない。