三重県政に関する年内の明るい話題を挙げるとすれば、志摩市で6月に開かれたG7三重・伊勢志摩交通大臣会合だろう。平成28年のG7伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に次ぐ大規模な国際会議の開催に、県や地元は沸き立った。
会合には、G7の各国から交通分野に関する大臣や大使らが参加し、過疎地を含む地域での移動手段の確保などを巡って議論。手頃で公正かつ公平な交通サービスを継続する重要性などを訴える「G7交通大臣宣言」を採択した。
目玉だったのは、ウクライナのインフラ復興を担当するクブラコフ副首相の参加。事前に公表されない「サプライズゲスト」の登場に全国の注目が集まった。会合では、交通インフラの復旧などでウクライナを支援することも確認された。
伊勢志摩サミットに続き、大臣らの伊勢神宮訪問も実現。ウクライナ情勢が収束の兆しを見せない中で、平和への祈りをささげる場への訪問は意義深いシーンとなった。訪問を提案していた県職員をはじめ、関係者らは大いに喜んだ。
開催の成果はそれだけではない。132人の児童生徒や学生らが会合に協力。大臣らに県の伝統工芸などを英語で解説したり、料理を提供したりした。生徒らは「多くの刺激を受け、良い経験になった」などと振り返っていた。
県によると、会合の経済効果は約98億3200万円に上る。公表されているG7関係閣僚会合の経済効果では過去最高額。想定の3倍以上という。経済効果を発表した一見勝之知事は「非常に大きな宣伝効果」と満足そうに語った。
会合で交わされた議論や交通大臣宣言は、県の交通施策を後押ししているようだ。一見知事は今月の定例記者会見で、亀山駅を境にJR西日本とJR東海で運用が分かれるJR関西線で、直通列車を実証的に運行する意向を表明した。
一般のドライバーが自家用車で客を運ぶ「ライドシェア」の導入にも、県は意欲的な姿勢を見せる。一見知事は都市部と交通空白地を分けて制度を検討するよう、全国知事会に提案。全国知事会は、この提案を踏まえた要望書を国に提出した。
他方で課題も。筆頭は海外メディアの来県がなかったことだろう。県は会合に関連して5億円以上を投じたというが、それは県内の魅力発信に期待してのこと。それだけに、県職員からは「まさか誰も来ないとは」と落胆の声が上がった。
県内を訪れる外国人観光客は依然として伸び悩む。昨年の外国人宿泊者は約4万8700人で、全国順位は27位。毎年、30位前後にとどまっている。この課題に会合の成果を生かせるかどうかも、県内開催の成否を占う。