伊勢新聞

2023年12月22日(金)

▼「発明王エジソン」が初めて特許をとった発明は1868年、電気投票記録機だった。議員が議席でボタンを押せば瞬時に賛成票と反対票を集計する。投票にかかる時間が大幅に短縮できるが、時の米国連邦議会も各州の議会も採用しなかった

▼これによって、議事妨害や与野党交渉などができなくなる。民主主義にとってもっとも不要なシステムである、という意見が大勢を占めたのだ。日本の国会では反対法案を阻止するための野党の牛歩戦術が知られる。しばしば国民の支持を受けたが、多用するうちに批判も強まり、あまり見かけなくなった

▼エジソンの発明から130年後の平成10年、参議院で押しボタン式の投票装置が導入されたが、出席議員の5分の1以上の要求で記名式にすることができ、牛歩は阻止できないが、昨年、れいわ新選組が復活させのは5年ぶり。今年にかけて3回実施している

▼県議会は20日の代表者会議で、自席のボタンで議案などへの賛否を投票する「電子採決」を来月18日開会の令和6年定例会本会議から導入することに決めた。四日市、いなべの市議会など市町では多数だが、都道府県は2例目

▼結果は議場のスクリーンに表示されるため、これまでの「起立採決」に比べ、議員の賛否が明確になるという。対決議案などのたびに議場退出や着席議員の数と名前を懸命に数えたことを思い出す。万一を思って起立多数としか書けなかった。今後は議員の出処進退が明確になる

▼白票や議事妨害が民主主義の精神という考え方もなくなっていくに違いない。喜ぶべきか悲しむべきか。