伊勢新聞

<1年を振り返って>三重県庁で相次いだ事務処理ミス 贈収賄などの不祥事も

【臨時庁議で不適切な事務処理の再発防止を指示する一見知事(右奥)=10月5日、県庁で】

三重県庁は今年、個人情報の流出や公文書の紛失など、事務処理ミスの多発に悩まされた。議会に提出した議案で記述の内容を誤るという重大なミスも。さらには県企業庁発注工事を巡る贈収賄事件も発生。職員の資質に疑いの目が向けられた。

県によると、本年度に入ってから県で発生した不適切な事務処理は14件。このうち公文書の紛失が4件、個人情報の流出は10件に上った。過去の件数とは単純に比較できないが、県の担当者は「特に多いと言わざるを得ない」と指摘する。

個人情報の流出では、互いにアドレスを閲覧できる状態で421人に電子メールを送った県立宇治山田高(伊勢市)が、誤送信の1週間後も同じミスをする事態に。同校が一度目のミスを受けて掲げた「再発防止」の空虚さが垣間見えた。

公文書の紛失を巡っては、上司への報告が遅かったことが問題化した。新型コロナウイルスに関連した補助金の公文書では、紛失の発覚から報告までに4カ月を要し、一見勝之知事が定例記者会見で「(報告が)遅い」と苦言を呈した。

事務処理ミスの多発を重く見た一見知事は10月5日、部局長らを集めた臨時庁議を開いた。ミスを起こした部局の幹部らが一人ずつ謝罪。一見知事は「公務に携わる者としての自覚を再確認してもらいたい」と、職員らに猛省を促した。

しかし、その後も事務処理ミスは収まらないどころか、県中枢の総務部も引き起こすことに。今月には県が議会に提出していた3つの議案で記述の誤りが判明。うち一般会計補正予算は「減額」とすべきところを誤って「追加」と記載した。

今年は職員への処分も増えた。1月以降で懲戒処分を受けた県職員は既に5人で、前年は懲戒処分を受けた職員がいなかったことを踏まえると状況は深刻。懲戒処分を受けた教職員も前年は5人だったが、今年に入ってからは13人に上る。

事務処理ミスや不祥事の多発は、かねてから県幹部らを悩ませてきた。相次ぐ事務処理ミスの末に障害者雇用率の算定誤りが発覚したのは、5年前のこと。鈴木英敬知事(当時)が正副議長を訪れて謝罪するという異例の事態となった。

一方、今年は31年ぶりに県庁で贈収賄事件が発生。公共工事の入札で助言をする見返りとして現金を受け取る約束をしたなどとして、県職員ら3人が逮捕された。一見知事は「私がいる前のこと」としつつ、議会などでの謝罪に追われた。

県は収賄の再発防止に向け、公共工事の発注に特化した守秘義務などのガイドラインを年度内に策定する方針。各所属で開く「コンプライアンスミーティング」では、事務処理ミスの実例を踏まえて対策などを話し合ってもらう考えだ。

ただ、収まったと思えば再び多発する事務処理ミスや不祥事に、根本的な対策は見いだせていない。県の担当者は「特効薬のような対策はないのが実情。全ての職員に自分事として考えてもらえるよう、粘り強く訴えるしかない」と話す。