昨年から今年にかけて松阪地区広域消防組合の職員が相次いで強盗と詐欺の疑いで逮捕された。同組合管理者を務める竹上真人松阪市長の指示で、全職員に対する聞き取り取り調査が続いている。
同組合は職員296人。松阪市231人、多気町31人、明和町34人の構成。松阪市が今年雇用した弁護士らが調査を進めている。
竹上市長は今年4月5日、全職員調査の開始を発表し、「2回目の逮捕を受けて、このままやっていくのは難しいと感じた。目的は組織の浄化」と述べた。
また「逮捕された2件の調査で、先輩から金を貸してくれと頼まれ、言われるがまま貸して、お金に窮していた事例があった。消防は上下が厳しく、かなり少数で、閉ざされた組織。組織に対する不満や見聞きする事柄を聞き取る」と説明した。
詐欺事件では同組合が9月14日、同僚らから現金1435万円をだまし取ったとして逮捕、起訴された50代男性職員を懲戒免職した。
男性職員は同僚から家族トラブルの相談を受けた際、探偵を雇って解決が必要とうそを言い、昨年8月30日―9月5日、自分の口座に合計500万円を振り込ませてだまし取ったとして今年2月14日に逮捕、3月6日に起訴された。他に同僚の親族らに対する3件の詐欺罪で起訴され、いずれも起訴内容を認めている。
強盗は昨年7月26日、同市大黒田町の住宅で80代女性に「金出して」と包丁を示して脅迫し、現金7万円を奪った事件。松阪署が同年8月27日、住居侵入と強盗の疑いで30代男性職員を逮捕した。
津地裁は今年9月7日、主な証拠の被害者方で発見された足跡について、同型の靴が大量に生産され「他の者が同型の靴を履いて犯行に及んだ可能性を否定できない」として無罪判決を言い渡した。男性職員が無罪を主張しているため、同組合は処分をしていない。
懲戒処分を公表するたびに同組合の松本芳昭消防長が陳謝し、「再発防止に取り組む。住民の信頼回復に向けて全力を尽くす」と誓っているにもかかわらず、再発している。
同組合は今年10月26日、書店で万引を繰り返していた50代男性職員を停職6カ月とした。
男性職員は今年8月2日、管内の商業施設書店でバイク雑誌2点を万引した。令和2年くらいから同店で十数回、万引したという。万引した雑誌68冊分と防犯カメラ増設費、警備員巡回費の計約21万円を弁済し、退職した。「信頼回復に向け頑張っている中、組織に迷惑をかけ申し訳ない」と話しているという。
人命を救う誇りある消防職員が犯罪に走るのはなぜか。早急に問題点を洗い出し、改善策を示してほしい。聞き取り調査の結果報告は予定していた11月初旬から本年度内へと遅れている。