伊勢新聞

2023年12月21日(木)

▼県民のほんの小さなミスも見逃さない県が、新型コロナ感染拡大に伴い影響を受けた近畿日本ツーリスト津支店の4、5年前の支援金・補助金過大請求について「確認が不十分だった。今後は十分なチェックに努める」などと釈明し一向、恥じ入る風も、悪びれた風もないのは、いつもながらほとほと感じ入る

▼何も新型コロナ関連補助金だけのことではない。かつての中途採用拡大助成をはじめ、国が景況などを見て力を入れた政策関連は、不正受給が後を絶たず、数年後の忘れたころ明らかになる。県の関係団体が不正流用で返還を求められたことがあった。「事前に県当局と何度も打ち合わせして申請したんだから、問題があるなら教えてくれたらいいのに」と理事会で、事務局長がしれっとして言っていた

▼県独自の助成金がどんどん削られていくころで、ひどすぎると言ったら担当部長が「だから(問題となった補助金を)うまく運用して、だなぁ」と言っていた。いわゆる“政策補助金”とでも言うのか。申請すれば手軽な手続きで出てきた。近ツリのような上品な会社は、観光政策の実績に前のめりになる県の口車につい乗ってしまったのかもしれない

▼確認しようもない個人情報漏えいや事業への影響を「なかった」と断定してみせるのも見事だ。責任の矛先を少しでもそらす知恵に違いない。「県の管理はずさん」だとして同社を詐欺罪で告発した稲森稔尚県議が、損害や悪質性はないとして告訴しない県の対応を「甘い」と批判した。「賢い」の誤りではないか。頭に“ズル”が付くかどうかは別にして。