全国の小中学校の令和4年度の不登校児童生徒数が、過去最多を更新した。三重県の鈴鹿市でも増加する中、市は県内唯一となる小学校の校内適応教室「ほっとルーム」の設置や、不登校児童の支援に理解を示す地域の人材「スクールライフサポーター」による登校支援の取り組みで、子どもたちに寄り添う。市教委教育支援課の津田由美子課長(56)は「200日休んでいた子の欠席が、100日に減っても不登校として扱われる。しかし、個々で見ると出席日数が増えるなどの変化はある。地道な活動ですぐに結果は反映されなくても、続けていくことに意義がある」と話す。
市教委によると、令和4年度の市の不登校児童生徒数は小学生184人、中学生284人。全児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は、前年度比で小学生は0・4%、中学生は1・52%増加した。
津田課長は「教室に行きづらい子どもたちにはそれぞれの困り感がある。複雑に絡み合って、本人にも理由がはっきりしないことはよくある。コロナ禍で人との関わり方がうまくいかず、学校に足が向かない子も増えた。一方、自我が芽生える前の行き渋りは早期対応で改善することも多い」と分析する。
不登校傾向の児童が「安心、安全な居場所」として利用する「ほっとルーム」は現在、対象児童が多い市内10小学校に設置。元々、中学校で実施する別室登校に効果があったことから昨年、小学校での取り組みを始めた。
教員免許を所有する指導員1人を各校ごとに週6時間配置し、子どもたちの学習支援や心のケアなどにあたる。指導員が不在の時間は手が空いた教員が対応する。
ほっとルームのモデル校となるのは、同市桜島町4丁目の市立桜島小学校(中馬圭子校長、669人)。同小では5年ほど前から学校独自で取り組みを進めてきた。
中馬校長(59)は「子どもによって利用の仕方はいろいろだが、校内に居場所があることは子どもにとっても保護者にとっても大きな安心感につながる」と話す。
指導員の鶴見美菜さん(47)は「ゆっくり焦らず子どもたちのペースに合わせながら、いいところを見つけてとにかく褒める。自分に自信をつけることが大事」と話す。
これまでに、「学校に行きたくない」と家に閉じこもっていた子が、ほっとルームに登校するうちに「教室に行ってみたい」と話すようになり、短時間ではあるが教室に行けるようになるなど、着実に成果を上げてきた。
一方、平成26年度から始まったスクールライフサポーターによる小学生の登校支援は本年度、対象児童数が多く、必要性が高いと市教委が判断した21校に20人を派遣。1校あたり1日3時間、週3日程度を分担し、支援にあたる。
スクールライフサポーターは児童を自宅まで徒歩で迎えに行き、保健室などで一緒に過ごすことで、心の悩みや不安、ストレスを和らげる役割を担う。
もちろん、迎えに行っても必ず一緒に登校できるわけではない。それでも、友達や先生とは違う「相談できる大人」の存在が、子どもたちの心の居場所や安心感につながり「スクールライフサポーターがいるから登校できる」という児童も少なくないという。
同市東江島町の市立愛宕小学校と石薬師町の市立石薬師小学校の2校を担当する元保育士の谷口麻衣子さん(52)は「中間の立場として保護者から相談を受けることも多い。子どもたちだけでなく、保護者の話にも寄り添うことで、学校と連携して支援につなげることができる」と話す。
11月18日、市で初めて中学3年の不登校生徒と保護者を対象にした進路ガイダンスを実施。高校別進路相談会などがあり、生徒42人と保護者計約百人が参加した。
参加者からは「不登校の子どもにも行ける高校があることが分かった」「高校進学への意欲が持てた」などの声があり、不安感の払拭や将来を考えるきっかけの一つとなる取り組みとして、高い評価を得た。継続的な開催に期待がかかる。
津田課長は「今後も支援体制を充実させるとともに、子どもたちが登校しやすい環境を整えていければ」と話した。