伊勢新聞

2023年12月15日(金)

▼職員の資質向上については贈収賄事件を起こした県企業庁にとっても「大前提」だそうである。だから、技術系職員の確保や育成を進める経営基盤強化に向けた「経営改革取組方針」に「書くことではない」というのはなかなか分かりにくい“論理”ではないか

▼「質」と「量」の分離が、企業庁がこれまでさまざまな問題を抱えてきたことの根源にあった。戦後の電力需要の拡大に応えるため、企業庁は大量の電気技術者を採用した。その後の展開で“余剰技術者”解消に悩み、異動を促進するだけでは足りず、新規事業創設に活路を求めた。青山高原分譲やRDF(ごみ固形燃料)事業へと手を広げ、散々な結果に終わったのは周知の通り。「上下水道二つの特化できた」(企業庁幹部)とほっとした矢先の収賄事件でもあった

▼「技術系職員の確保や育成」とは、つまり電気技術者以外の技術系職員ということだろう。体質改善を図ろうとしている矢先という意味もあるのだろうが、質を分離した増員は事業環境の変化の中で将来、同じ道をたどりはしないか。鉄は熱いうちに打て、である。大前提だからといってこの時期、資質向上を別立てとして「経営改革取組方針」をまとめるなどは民間企業ではあり得ず、県民も首をかしげるに違いない

▼昔、知事選に出馬する現職の事務所開きに参加した企業庁長が「企業庁は問題ないですから」と少しバツの悪い表情を浮かべた。事業庁だから公務員の「政治活動の禁止」からまぬがれるという意味だと聞いた。公務と政務など、ご都合主義で行動を使い分ける時代なのか。