▼三重県議会常任委員会のやりとりで思わず口元が緩んだのは、戦略的プロモーションなる方針の中間案で、県が統一的なキャッチコピーとして提案した「美し国みえ」について、杉本熊野県議が「何の魅力も感じない」と酷評したのに対し、中川正美県議が「最高の言葉」と評した時だ
▼県のキャッチコピーがいまイチなのは職員の発想の貧困さだろうが、古典から言葉を求める手法は、平成21年の野呂昭彦県政が編み出した「美し国」が成功例だ。天照御大神の祭祀を倭姫命に託した『日本書紀』の一節に由来する。「美し(うまし)」は「うまい」であり、海や山の自然に恵まれ、心が満たされる国。中川県議が「最高の言葉」というのはうなずける
▼一方、県のプロモーションは「三重の魅力を効果的に発信し、選ばれる三重を実現する」が定義。その旗印はいかにと期待したら、20年前そのままの「美し国」が特段の工夫もなく再登場してきたというのでは「何の魅力も感じない」と杉本県議が言いたくなる気持ちも分かる気はする
▼翌日の常任委では、リニア中央新幹線の県内駅について、服部富男県議から「本来は県の考えをしっかりとまとめて話をすべき」と、亀山市内の3候補地を絞り込まずにJR東海に提案したことに苦言を呈されて、県は「最終的にJR東海が決める」と当たり前のことを言った上で「詳細が決まればさらに計画を策定したい」
▼どこに決まろうが計画を直して対応します、と言っているようでもある。県の魅力発信も、県全域への波及効果にも、それほどの思い入れはないのだろう。