▼村木厚子さんが厚生労働事務次官に就任(平成25年7月)して直後、共同通信加盟社論説委員会議の講師に招かれ、前年の第二次安倍政権の重点施策となった女性活躍推進に対しこう語った。「幾度も言われてきたことでいままでは信用できなかったが、今度はどうやら本気だと…」
▼それから10年。村木事務次官が退官した翌年(同28年)に、同省が企業のジェンダー平等に向けた取り組み情報を集約しようと開設したサイト「女性の活躍推進企業データベース」で、少なくとも500件超の誤記があることが分かったことについて何思うか
▼データベースでは女性管理職比率が実際と10ポイント以上の格差があり、小規模事業者に誤記は多く、中には4%程度なのに40%以上と記入されている例もあった。男女賃金格差についても、複数企業が誤記を認め、政府担当者も入力の“ミス”を認めているという
▼女性活躍推進の重点施策は女性活躍推進法の公布(同27年)とともに働き方改革に重点を移し、男女格差の解消は企業の中で後回しになっていく。データベースが“誤記”によって男女管理職差や賃金格差が見せかけの均衡に向かっていることは、政府にとってもまことに都合のいいことだったに違いない
▼世界経済フォーラムの今年度のジェンダーギャップ指数では、日本は146カ国中125位。前年から9ランクダウンし、順位は同18年の公表開始以来、最低だった。政治が世界最低クラスの138位で政治に継続して取り組む意欲が薄いことを示している。働く女性は増えたけれども、である。