伊勢新聞

<まる見えリポート>学校の垣根越え球児交流 高校野球選抜チーム解禁

【愛知県チームとの第1試合、七回にソロ本塁打を放って生還した津西の中尾選手を迎える三重県チームの選手ら=25日、愛知・刈谷球場で】

日本高野連が国内での選抜チーム結成を解禁したことで各地で学校の垣根を越えた高校球児の交流が始まっている。三重県高野連(前川欣也会長)も今月、県内の高校2年生を対象にした硬式野球のピックアップチームを初めて結成、愛知県のピックアップチームと交流試合を行った。各校の技術向上だけでなく競技普及も目的とした初の取り組み。両県の持ち回りで開催し、来年は津市での実施を予定している。

第1回愛知県・三重県ピックアップチーム交流試合は25日、愛知県刈谷市で行われた。三重の尾﨑英也、愛知の麻王義之両県監督による握手、選手同士のプレゼント交換などの後、2試合が行われ、1試合目は三重チームが4―2で勝利。2試合目は6―6で引き分けた。

試合の合間には少年野球チームの子供たちとの「きっず交流会」を実施。三重県チームの選手らもキャッチボールやストラックアウトゲームのお手伝いをした。来年も同様のイベントを開くで、県高野連の役員らが熱心に視察を行っていた。

交流戦については、投手の登板は最大3イニングまで▽DH制の採用可能―などの設定を設け、多くの選手が出場できる工夫を施した。三重県チームはベンチ入り25選手を全員起用し、今年秋の神宮大会で活躍した豊川の中軸打者、モイセエフ・ニキータ選手らの愛知県チームと互角の戦いを展開。いなべ総合学園を率いる尾﨑監督は「一人一人が、後ろにつなぐ意識、自分の役割を果たす意識を持って戦えていた」と選手らをたたえていた。

いずれの選手も各校の顔と言える存在だ。25人が一同に顔をそろえる機会は11月18日の最終選考会と交流戦当日の2日だけだったが即席チームとは思えない連携を見せた。2試合で失策は1つ。第1試合に4番、一塁手で先発し、攻守で活躍した寺井広大選手(神村伊賀)は「皆野球が分かっているので練習をしていなくても連携がうまくとれていた」と胸を張った。

1番、右翼手で先発した第1試合で初回に先制点につながる右越三塁打、七回にダメ押しの右中間へのソロ本塁打を放った中尾風人選手(津西)は「レベルの高いところで試合ができて良かった。(津西で)キャプテンをしているのでこの経験を自分のチームに持ち帰りたい」と意欲的だった。

普段接点のない他校の指導者から指導が得られたのも選抜チーム活動ならではのメリット。第1試合で先発し3回をパーフェクトに抑えた中村帆高投手(宇治山田商)はプロ野球阪神の西勇輝投手らを育てた戸田直光監督(菰野)から「今の状態で一冬越せば甲子園でも通用する」と声をかけられたことが嬉しかったと話す。秋の東海大会で4強入りし、来年春の選抜大会出場を目指し仲間と練習中で、ピックアップチームの経験も糧に「良いモチベーションを保って練習を続けたい」と声を弾ませていた。