伊勢新聞

「ひみつビール」50種以上に 同級生2人の夢、伊勢で稼働1年 三重

【工場稼働から1年を迎え、思いを語る藪木さん(左)と佐々木さん=伊勢市二見町のひみつビールで】

【伊勢】三重県伊勢市二見町で、自家栽培した農作物などを原料にこだわりのクラフトビールをつくる小さな醸造所がある。地元の同級生2人が夢をかなえて昨年立ち上げた醸造会社「ひみつビール」。工場稼働から約1年を迎え「おいしいビールはもちろん、ビール造りを通じて地域を盛り上げたい。人と人をつなぎ、またここに戻ってきたくなるような居場所をつくりたい」と話す。

2人は、市内の県立宇治山田高校の同級生だった藪木啓太さん(35)と佐々木基岐さん(34)。藪木さんの祖父母から受け継いだ農業用の納屋を改装した工場内は、ほんのり酵母の香りがする。原料もできるだけ自分たちで育てようと、ライ麦や柑橘類、ベリー、ハーブなど農作物も栽培。新商品の開発、醸造、缶詰め、ラベル貼りと、作業はほぼすべて2人でこなす。

共に酒や食に興味があった2人。高校卒業後、偶然進学先も同じ石川県立大に。それぞれ農業や食品科学を学び「将来何か一緒にできたら」と夢を描いたという。

大学を卒業し、藪木さんは出版社、佐々木さんは日本酒メーカーの研究員として務めていたが、同窓会で再会。そこで飲んだ英国のクラフトビールの味わいに衝撃を受け、「自分たちでビールを造ろう」と動き出した。会社をやめ、各地のクラフトビール工房を転々として経験を積み、昨年、念願の醸造所の設立にこぎつけた。ひみつビールの名前には、「秘密にしたいけど、誰かに教えたくなるようなビール」との思いを込められている。

昨年11月の初出荷以降、毎週新作を世に出し、これまで50種類以上を開発した。製造量が限られるため、現在の流通の中心は関東圏。市内では、飲食店や一部酒販店などで販売する。藪木さんは「もっと地元で愛されるビールにしたい。このビールを求めて県内外から人が来るような伊勢を代表するビールに育てたい。いつか直営のビアホールもつくれたら」と語った。