伊勢新聞

2023年11月20日(月)

▼鈴鹿市で不登校の生徒とその保護者を対象にした初めての進路ガイダンスがあり、中学3年生42人とその保護者ら計約100人が参加した。中学校の進路決定時期にあたるため開催時期を合わせたという

▼その意義やよし。が、病欠などを除く県全体の公立学校の不登校生が令和3年度で3875人。7年連続増加という中で、ささやかな数字であり、遅すぎる試みではあろう

▼県教委事務局高校教育課の職員が説明した。高校には全日制、定時制、通信制の3課程あることや令和6年の入学者選抜日程などで、鈴鹿医療科学大学医療福祉学科臨床心理学専攻4年の不登校経験者が体験を話した。「自分のペースで進めることができる」として通信制を選択し「勉強が復活の原動力になった。自己効力感(できると自分を信じられる力)が上がり、自分の将来についていいイメージが持てるようになってきた」

▼むろん異論はない。ごもっともだが、県教委が絡むことにいささか息苦しさを感じないか。全日制など3課程の受け入れ体制があることに、特に不登校対策は見られない。一般の進路ガイダンスと違わないのではないか

▼体験談も、通信制の選択に得心はいくが、可能なら、3課程以外の道を進んだ話も聞きたかった。現在の学校制度に対応できないで不登校になった生徒の事情は個人個人で千差万別だろうが、いかに学校教育制度に組み入れるかの選択肢だけでは不登校問題は解決しまい

▼社会に広がるストレスから児童生徒を守るには学校教育制度に立脚した弥縫策(びほうさく)だけでは限界のあることは間違いない。