伊勢新聞

2023年11月15日(水)

▼松阪市議会でひげがむさ苦しいと集中砲火を浴びたのは前市長だった。剛毛体質で、朝剃っても昼にはこうなってしまうという釈明で、明治の政治家はひげが定番。手入れが行き届くまでにはそれぞれ“無精ひげ時代”があったろうし、持って生まれた容姿にいちゃもんをつけるのはどんなものかと味方になって大いに弁じた記憶があるが、世は多勢に無勢らしい

▼低価格をうたう脱毛エステにひっかかり、高額の契約をさせられる10~20代の男性が増えているという。その商法もだが、背景に脱毛を希望する男性が多いということに驚く。脚本家で映画監督の夫松山善三のすね毛について、エッセイストで女優の妻高峰秀子がテレビ朝日『徹子の部屋』で語っていた。助監督時代に走り回らせられてズボンでこすれたか、ふさふさだった毛がなくなってしまった

▼「つるんとして、嫌だわ」と言っていたが、最近のNHK『ドキュメント72時間』で取り上げた脱毛エステでは、訪れる男性客の意図は「就活の面接に有利だから」「女性に嫌われないため」が多かった。本人が、いわゆる“むだ毛”を嫌っているフシがある。その筆頭に、かつて男性らしさを象徴するとされた胸毛があげられたりする

▼コンビニのイートインで、香水らしきものを首回りにかけている若い男性を見かけた。香りを漂わせた男性に少なからずすれ違う。日本男児とか、大和魂という時代ではないのだろう。岸田文雄首相が10月国会の所信表明で使った「不撓不屈」も、意図とは別に、意味がちんぷんかんぷんだった向きは多かったに違いない。