伊勢新聞

大観小観 2023年11月12日(日)

▼「コンプライアンスに取り組む中で起きたことは遺憾」と人事課長が陳謝した。「コンプライアンス」は法令順守の意。行政法が主たる対象のはずだが、どうやら電車内で女性のスカート内を盗撮した38歳の主査の行為を指しているらしい。では「取り組む中」とは―

▼事例は少なくないので戸惑うが、とりあえず浮かぶのは先月5日、一見勝之知事が県職員の事務処理ミスの多いことを謝罪し、自覚が足りないと原因究明や再発防止策を指示したこと。指示は事務処理ミスを発生させた部局に限定し、対象を事務処理ミスに絞り込んだのがそもそも軽率だったのではないか。人事課長は今回「各部局に注意喚起する」。泥棒つくって縄をなすの感が強い

▼携帯電話のカメラ機能の普及で、スカート内盗撮はぐんと増えた。四日市市立中学校の36歳の男性教諭は昨年7月、サンダルに携帯電話を忍ばせる仕掛けをして、市内の商業施設でスカート内を撮影した。勤務先の中学校の体育館の女子トイレにも仕掛けている

▼再発防止を事務処理ミスに限定したことにも疑問が残る。議会承認を棚上げにして看護大学の授業料を値上げしたり、文化行政の権限を定められた条例を制定せずに県教委から知事部局へ移そうとしたり。行政手法自体のほころびが見える。氷山の一角と受け取れなくはない

▼深刻なのは、指摘されても直ちに認めようとしないことだ。正しいと思い込んでいるのか、これぐらいは押し切れると思ったか。生成AI(人工頭脳)が活用される時代。コンプライアンスも、軽犯罪法も含めて学び直す必要がある。