伊勢新聞

2023年11月3日(金)

▼誰に言われたわけでもなく、デイサービスセンターに30年近く通い続け、利用者の話し相手になり、入浴後に髪を乾かし、お茶出しをしたり―。その活動が評価されてボランティア活動などで顕著な実績のある個人・団体に贈られる緑綬褒章を受章するのだろうが、何の肩書きも持たない受賞者というのは、寡聞にしてあまり聞かない

▼清水益女さん、83歳。社会福祉施設等奉仕者。子どものころから困っている人を見ると声をかけずにいられず、高じていろんなボランティア活動にかかわるようになったという。車いす生活になった夫から「ボランティアに行きたいでしょ」と言われて無理なく再開することにしたというから筋金入りだ

▼「緑綬」も聞き慣れない褒章なのではないか。「德行卓絶」「実業精励」「衆民の模範」などを基準に明治14年創設されたが、各褒章に趣旨が枝分かれし昭和25年に途絶え、平成14年の栄典改正で「自ラ進デ社会ニ奉仕スル活動ニ従事シ徳行顕著ナル者」を対象に平成16年、復活した

▼平日は街頭に立ち小学生を見守り、プリントに丸付けする学童ボランティアに出向く。お年寄りや若い母親の困った様子を見ると「お手伝いできることありませんか」と声をかける。程度の差はあれども、かつてはボランティア団体に多く存在したが「正当な対価」は必要とされるNPO(非営利団体)が社会福祉の中心となって少なくなったといわれる

▼「健康を維持して、できる限りボランティア活動を続けていきたい」。助け、助けられ。さわやかな風が吹き抜けていくようだ。