子どもたちの居場所づくりに取り組む三重県鈴鹿市のNPO法人シャイニング(岡田聖子理事長)は11月1日から、市内小中高校の学生服や体操服などのリユース販売を始める。取り組みの中心となる桐生めぐみ理事(46)は「制服リユースのモデルケースとして滞りなく循環する流れが鈴鹿市全体で構築できたら」と話す。
制服リユース事業への取り組みは約2年前、貧困家庭への食糧支援や不登校支援などの活動の中で、「新しい制服が買えずに不登校になっている生徒がいる」との相談を受けたことがきっかけ。
市教委によると、市には各校ごとに制服貸出制度はあるが、運用の実情は把握していないという。
学生服は比較的高額で、子どもたちの成長により体格に合わなくなり買い換える際の経済的負担が非常に大きいことや、市全体の制服リユース文化が定着していない現状から、岡田理事長(46)は「制服リユース事業の必要性を感じた」と話す。取り組みはことし、県の「第2回県民応援NPOプロジェクト」のほか、同市まちづくり応援補助事業として採択されており、県のSDGs(持続可能な開発目標)推進パートナーにも登録した。事業費は補助金などの120万円を充てる。
必要がなくなった学生服や体操服、学校指定の通学バッグやヘルメットなどを市内各所にある所定の制服回収ボックスに入れると、スタッフが定期的に回収。補修やクリーニングを施し、市価の5分の1程度を目安に販売する仕組み。
在庫状況は1着ずつ写真を撮り、データを入れてホームページ上で確認できるようにする。
販売価格はおおむね学生服が上下それぞれ2000―3000円程度、体操服は500―1000円程度を見込む。ランドセルや水着、運動靴などは回収していない。
制服回収ボックスは、趣旨に賛同した市内企業和光紙器の手作りで、夏休み期間中に市内公立小中学校計40校のほか、県立石薬師高校、市立図書館、同市社会福祉センター、同市国分町のオリオンプラス内にある販売所の計44カ所に設置した。
今後、そのほかの市内高校や私立校、高専、大学、市役所などにも設置を呼びかけたい考え。
市内全公立小中学校に回収ボックスが設置してあるのは、全国的にも珍しく、岡田理事長が廣田隆延教育長に直談判したという。
岡田理事長は「子どもたちが直接回収ボックスに入れることで、自分たちもリユースに参加しているという意識を持つことは大事」と話す。
これまでに100着ほどが集まった。比較的きれいな状態のものが多く、「半分以上捨てないといけない」というインターネット上の声とは裏腹に、8割はリユースできる良品という。一方、ジャージや制服に施された名前刺繍が作業の足を止める。
桐生理事は「刺繍がこんなにネックになるとは予想外だった。取れるものはできるだけ取るが、無理をすると生地に穴があいてしまう。状態は良くても刺繍が取れないと販売できない。名前刺繍の有無は学校ごとに違う。環境問題の視点で考えた場合、本当に必要かを再検討してほしい」と話す。
学校を通じて9月に子どもたちに配布したチラシで、保護者からの問い合わせも増えているという。
桐生理事は「実店舗で対面販売することで、保護者にも安心感を持ってもらえると思う。高校の制服はまだまだ少ないのでもっと周知していく必要がある。困っている人がリユースでつながれば」と話した。問い合わせはシャイニング=電話090(7862)5309=へ。