伊勢新聞

2023年10月26日(木)

▼国政選挙結果の感想を問われ、一期目の北川正恭元知事は、情報公開が勝敗のカギとなった、と言ったことがある。その翌々年だったか、オンブズマンの情報公開ランキングで中位以下だった県を全国一に押し上げた。前任者である田川亮三元知事は六選出馬について、間近に迫っていた国政選挙で世論の動向を見て、と答えた

▼野呂昭彦元知事も、ある候補者の落選直後、彼の所属するグループの幹部について「これでおしまいだな」と言い放った。為政者、政治家というのは、選挙結果でも一般有権者とは少し違った見方をするものに違いない。岸田文雄首相はどうか。衆参補選を終えた国会開会で、特に結果を踏まえた政策が見当たらないのは選挙前に出し尽くしたからということか

▼与野党対決が一勝一敗で、今後の政権の行方を左右すると、選挙前は緊張感も走ったが、終わってみたら何も変わらなかった。両代表とも最悪の事態は免れたと内心ほっとしているとも報じられている。その足元で、両補選とも、投票率は過去最低だった。特に参院徳島・高知合区は両県とも過去最低で、候補者のいない徳島は高知を17ポイント近く下回る23・97%と惨たんたるありさま

▼政治だけではなく、最高裁の合憲判断にも住民はそっぽを向いた格好で、一票の格差を金科玉条にするだけでは土台の民主主義がゆがむ恐れを浮き彫りにした

▼一票の格差は国政選挙に課せられた規定で地方政治にはない。県議選挙区は、県議会が県民から身近な存在になることを第一に今から工夫しなければ、参院補選の道を歩むことになりかねない。