伊勢新聞

<まる見えリポート>津市大門・丸之内地区の活性化 道路空間活用でにぎわい創出 25日実験開始

【空き店舗を活用した出店に向け、準備を進める学生ら=津市東丸之内で】

三重県津市大門・丸之内地区の活性化に向け、3月に官民で設立したエリアプラットフォーム「大門・丸之内 未来のまちづくり」(辻正敏会長)が取り組みを進めている。第1弾として、25日から来月中旬まで、立町・大門大通りと国道23号の道路空間を活用してキッチンカーなどを出店し、にぎわい空間創出の実証実験を行う。空き店舗が目立ち、衰退が顕著な同地区で目指すのは一時的な盛り上がりではない“恒常的な人の流れ”だ。その一歩が踏み出されるが、道のりは長い。

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 丸之内地区では、25日から31日まで国道23号沿いの丸之内商店街エリアで、東側1車線約370メートルを規制して歩道と一体的に使用しながらキッチンカーや空き店舗を利用した出店を行う。テーブルやイスも配置し、訪れた人が気軽に飲食できるようにする。

【今回キッチンカーなどが出店する大門・丸之内のエリア】

大門地区は来月7日から13日まで、立町・大門大通り商店街の道路を利用し、丸之内と同じくキッチンカーの出店などを進める。このエリアは車両通行が規制されているが、商店街の意向で将来的に通行が予定されている。そのため車両通行を想定し、沿道の両脇を利用してキッチンカーなどを配置する。

キッチンカーや出店ブースは地元の飲食店など56店舗が参加。各日飲食関係だけでも3―12店舗ほどが出店する見込み。

今回の目的は、数10万人が詰めかける「津まつり」など一過性のイベントで賑わいを創出するのではなく、平日も含めて恒常的な人の流れをいかに作り出せるかを実験し、検証することだ。

例えば国道23号の1車線を規制する丸之内エリアでは、今回の実証実験で可能だと判断した場合は、将来的にこの1車線を出店や憩いの場といったスペースとして活用することも視野に入れる。

背景に、オフィスビルなどが建ち並ぶ大門・丸之内エリアで働いたり、活動したりする約6千人の存在がある。これまで、これらの人々を日常的に呼び込む取り組みが不足していた。今回の実験はまずはランチなどで利用してもらい、恒常的に賑わいを生み出す仕組みを模索する。

大門・丸之内地区をめぐっては、約80年ぶりにまちの姿をつくりかえようと、昨年度に官民で20年先を目標とした「未来ビジョン」を策定。今年度からその実現に向け、約23団体・社が参加するエリアプラットフォームで取り組みを進めてきた。道路空間活用などの3つの実行チームをつくり、これまで約60回の会合を重ねている。

辻会長は「これまでまちづくりは続かず、一過性のイベントで終わってきた」と指摘。その上で、「20年先を見据えて進め、市民が誇りを持てるまちにしたい」と意気込む。

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 25日から始まる丸之内エリアの取り組みを前にした22日。空き店舗を活用した喫茶スペースの出店に向け、運営する学生や、丸之内商店街振興組合の関係者らが準備を進めていた。同組合の岡本恒事務局長(65)は「ようやくここまできた」と感慨深げに話す。

同組合では平成20年に国道23号の車線利用を初めて要望した。片側4車線のうち、歩道沿いの一車線を有効活用し、まちづくりに生かそうとの考えだ。ただ、交通量や安全面などの問題もあり、管轄する国交省の理解はなかなか得られなかった。

あれから15年。会議メンバーには国交省も参加しており、今回ようやく実験のゴーサインが出た。岡本事務局長は「画期的なことだ」と喜び、「事故がないようにしながら、これが最後のチャンスとの思いでしっかり取り組みたい」と話す。

キッチンカーなどの出店も順調で、当日多くの人に来てもらおうと、辻会長がオフィスを行脚し、利用を呼びかけているという。盛り上がりに向け、関係者らの期待は高まる。

とはいえ、今回はあくまでも実験で、検証して次につなげなければ一過性のイベントで終わってしまう。仮に実験が成功しても、実際に整備となれば多くの年数を要する。20年先に向けた取り組みはスタートラインに立ったばかりだ。