伊勢新聞

2023年10月14日(土)

▼最近、流行っているのが「マウント」という言葉。「マウントを取ってくる」「マウントを取られた」のように使われている。マウントを取るとは、自分が相手より優位にあるとアピールする行為という。容姿、仕事、学歴、資産などをひけらかすことで、物事を有利に進めようというのだ

▼もともと「マウント」とは、動物が相手に馬乗りになる、乗りかかる行為「マウンティング」が由来。この言葉が流行ったため、最近の人間は二つに分類されてしまった。「マウントを取る側」と「取られる側」だ。ただ、どう見ても「取られる側」にはなりたくない

▼そのため「マウントを取られたときの対処法」なるものまで考案されている。「決して張り合わない」「マウントされるのを称賛と捉える」「割り切って普通に接する」「幸福感を他人と比較しない」など、心を平静に保てという

▼考えてみればマウント取り人間は、劣等感の裏返しとして優越性をアピールするに過ぎない。マウントが顕著に見られるのは、猿やチンパンジーの階層社会。常に誰が上位かが行動規範だ。日本もいまや完全な階層社会になったのだろうか?