伊勢新聞

2023年10月3日(火)

▼大山鳴動してネズミ2匹か。前県政当時に現実化し、現県政になって南部15市町が誘致を求めた三重県立大だが、結果的に沈静化する気配。ネズミ2匹とは、前・現県政のそれぞれが設置した県立大を検討した有識者会議である

▼ともに、諮問を受けた知事の意向に沿った報告書をまとめる。客観的かは知らぬが、データや分析、論理を駆使して、いかにも客観的な報告書案に仕上げ、しかも結論が正反対になっている手際は見事だ。現有識者会議は、本来未知数の効果を数値化し、費用を時節柄大きくして前の有識者会議に恥をかかせぬようにして正反対の結論に導いた。まことに―、ごくろうさまでした

▼大学誘致を公約にした松阪市長の思いと、コロナ禍で東京一極集中に陰りが見えた機会をとらえた前知事の思惑で追い風が吹いたが、「魅力ある公立大設置で若者の定着を」という狙いは“魅力”がお留守のまま逆風に入った。「執行部の前向きな姿勢がない」と議会の批判もあったが、国へ飛び立たんとする知事のもとでは前を向いているふりをするしかあるまい

▼ひところの“国立大でござい”から最近「地域共創」とか「地域創生」を提唱する三重大学の幹部に、報道機関との懇談会で若者が定着する高等教育機関の要諦を聞いたが「学長に聞いて」と警戒厳重を極めた

▼「どうして大学を作りたがるのか」というのが雑談を続けた後の感想だから、関心は「質」より「量」なのだろう。「学生の奪い合いになってしまう」とも。生き残りに精いっぱい。地元への関心は昔も今も、そう変わりないのかも知れない。