▼大量の情報が飛び交い、ビッグデータがどう利用されているか不透明な時代。フェイスブックから流出した個人情報から趣向、財産などが分析され、英国議員選挙や米大統領選挙にも影響を与えたとさえ言われる
▼三重県聴覚障害者支援センターから利用者ら1212人の個人情報が流出した可能性があるという。誰の手に渡ったのか見当もつかない中で「流出による被害は確認されていない」(同センター)。情報の海に消えてしまった。恐れおののきこそすれ、何の慰めにもなるまい
▼特殊詐欺も年々進化し、電話からメールへ。最近は音声通信で大海の中に網を張っている。収容された外国の入管施設を拠点に国内に指示を送っていたグループの存在は日本中を驚かせた
▼同センターのホームページを制作する女性職員がホームページ上の“セキュリティー警告”を信じたのはともかく、その連絡先に電話し、相手の言うままパソコンを操作した。その際、遠隔操作ソフトを入れられたとされる。何とも間の抜けた話だ。手口はATMを操作させる還付金詐欺と同じ。ATMまで誘導する手間が省け、いとも簡単な“一丁上がり”だったのではないか
▼身に覚えのないソフトが起動するまで「ここまでの事態に発展するとは思わなかった」と山本喜秀センター長。その通り。特殊詐欺の啓発通りに電話さえしなかったら、その指示に従ってパソコンを操作しなかったら、すぐに忘れ去られたはずの事件である
▼「情報管理を徹底する」という再発防止案が空疎に響く。特殊詐欺啓発が必要なのはお年寄りだけではない。