2023年9月29日(金)

▼昔も今も、高速道路上の多重衝突事故は多いが、かつて問題になったのは整備不良などで道路上に立ち往生した車だ。後続車が事故以上に事態を把握しづらく、突っ込んで大事故になる。車の異常に気づいたらまず路肩など安全な場所へ移し、高速道路に備え付けの電話から緊急連絡をするという手順がドライバーの啓発書などに明記されていた

▼携帯電話の手軽さが、そんな常識を忘れさせたのかもしれない。3月に亀山市で発生した東名阪自動車道での多重事故は、追突した中型トラックの運転者が車を移動させず、後続車へ知らせる標識も出さず、道路上に出て、携帯で119番通報して、後続の大型トラックにはねられ、5台が絡む事故となって3人が死亡したらしい

▼通報を受けた亀山市消防本部も、まさかそんな状態で通報しているとは思わなかったのではないか。事故の状況を聞き取り、追突された軽ワゴンの2人の救護を依頼している間に3人とも死亡した。「対応に問題はなかった」(櫻井義之亀山市長)という言葉では済まない、済ませたくない思いに胸がうずく

▼櫻井市長は通報者の安全確認の手順書を作ったが、通信員への義務づけはしないという。想定外に対応できなくなる恐れ、が理由というが、3月の事故がまさに想定外だったのではないか

▼一見勝之知事は市によってばらばらの安全確認規定を手順書に明記するよう市町の消防に求めるという。両者の違いがよく分からぬが、亀山市消防本部の先の対応を問われ「警察が捜査中。具体的コメントは控えたい」。いわく言い難しということか。