障害者入所施設「三重県いなば園」(津市稲葉町)の男性職員が入所者に暴行を加えた行為について、松阪市は障害者虐待防止法に基づく身体的虐待と認定した。認定は19日付。施設を運営する県の外郭団体「県厚生事業団」が21日、発表した。
事業団によると、この男性職員は先月20日、施設の廊下で扉を蹴っていた重度知的障害のある成人の男性入所者をモップの柄で制止。男性にかみつかれたことから馬乗りになり、腹部の周辺を殴った。
一方、この数分後に別の男性職員が同じ男性入所者の足を蹴ったとみられる行為について、市は「虐待の事実は確認できなかった」として身体的虐待とは認定せず。「不適切な行為」とした。
市は通知文書で、虐待の原因を究明し、再発防止策を講じるよう施設に要請。改善報告書などの提出は求めていない。施設は「被害者からの意向が示されていない」とし、職員の刑事告発はしない方針。
施設は先月25日、内部通報を受けて虐待の疑いを把握した。男性入所者が住んでいた松阪市が同法に基づいて立ち入り調査を実施。職員への聞き取りや監視カメラによる録画の確認などを進めていた。
男性入所者を殴った職員は施設の聞き取りに「扉を蹴っている行為を止めようとした」と説明。先月31日に依願退職した。もう1人の職員は「蹴った記憶はない」と説明。今月2日から休職している。
事業団の井戸畑真之理事長は21日の記者会見で「男性には深く謝罪する。利用者にも多大な心配をかけたことをおわびする」とした上で「事案を重く受け止め、通知を基にしっかりと改善する」と述べた。
施設は2年前にも入所児童を厳しい言葉で指導した行為について、県から心理的虐待の認定を受けた。井戸畑理事長は「(再発防止の)取り組みが浸透していなかった。実効性のある対策を講じる」と語った。