伊勢新聞

<まる見えリポート>鈴鹿初のジビエ加工施設を 「獣害」を「資源」に、猿田彦ファームが資金募る

【ジビエ加工処理施設の計画について説明する伊藤社長=鈴鹿市小岐須町の鈴鹿ブルーベリーガーデンで】

【鈴鹿】高齢化と農作物への獣害という地域課題を抱える三重県鈴鹿市西部の小岐須町で、ブルーベリーの観光農園などを運営する「猿田彦ファーム」(伊藤嘉晃社長)は、シカなどのジビエを衛生的に解体する加工処理施設を造るため、クラウドファンディングサイト「READYFOR」で、目標金額300万円の支援を募っている。期間は今月30日午後11時まで。

市には保健所の食肉処理業許可を持つジビエ処理加工施設の登録はなく、完成すれば市内初となる。

ジビエ処理加工施設を作り、観光農園のバーベキュー場をジビエ専門に特化することで、自然を生かした市の新たな観光資源にするとともに、地域産業としての雇用創出などを目指すという。

伊藤社長(41)は「高齢化が進む中で農地が荒れ、空き家も増えている。ジビエ加工処理施設を作ることが、限界突破するための第一歩と考えている。今ある資源を有効に活用し、この場所らしい発展を目指したい」と意気込みを語る。

伊藤社長は2年前、観光農園「鈴鹿ブルーベリーガーデン」を開園。しかし、園内で栽培するブルーベリーやショウガなどの農作物は多くがシカの食料となり、獣害に悩まされる日々が始まった。

農業を諦めかけたとき、シカを「獣害」ではなく「資源」として捉え、活用していくことを思いついた。さらにジビエ専門のバーベキュー場を充実させることで新たな雇用にもつながると、捕獲したジビエの加工処理施設を造ることを決めた。

昨年、狩猟免許を取り、県猟友会鈴鹿支部に所属。高齢化が進み、現在町内の会員は伊藤社長1人となり、市の許可を得て町内の農作物も守る。

処理施設は事務所敷地内にある延べ床面積約25平方メートルの空き屋を改築し、洗浄室や処理室、加工室などを設ける。

一日あたりの処理能力はシカやイノシシなど大型獣は4頭、アライグマやアナグマなど小型獣は6頭程度。狩猟期間を中心に通年稼働する計画という。

加工処理された肉は自社でバーベキュー用に提供するほか、ペットフード製造業者に卸す。

改築費用は約800万円。国の小規模事業者持続化補助金200万円、自己資金300万円のほか、不足分を今回の支援金で賄う計画。

経営が軌道に乗れば、解体作業やパック詰め、バーベキュー場スタッフなどで新規雇用を見込む。

すでに建物の解体作業などは始まっており、今後鈴鹿保健所の許可を得て、11月からの本格稼働を目指す。

クラウドファンディングは、目標金額を達成した場合に支援金を受け取れるオールナッシング方式を選択しており、9月16日現在の支援総額は、目標金額の57%となる171万円。

支援は1万―50万円まで11コースあり、返礼品はシカ角キーホルダーやジビエ肉優先購入権など。

伊藤社長は「似たような地域は全国的にたくさんあるので、自分たちの取り組みがモデルケースの一つになれば」と話した。