▼新聞業界の会合に出席する機会が増えてちょっぴり驚いたのは、ゲストスピーカーに質問する同業者らの前置きだ。「本日は貴重なお話をありがとうございました」「示唆に富み、大変刺激を受けました」など。その通りだったかはともかく、新聞記者も紳士である
▼6月の観測史上初の線状降水帯発生で被害を出した伊勢、鳥羽、志摩の3市の市長が12日、一見勝之知事に対策を求める緊急提言書を渡した。県も8日に、初めて線状降水帯を想定した図上訓練を新設「オペレーションルーム」で実施したばかり。「早々事態を深刻に受け止めて対応したことに感謝します」と3市長が切りだしたかどうか
▼ともあれ、図上訓練と緊急提言では、内容に隔たりはあるようだ。図上訓練で、職員らは電子黒板を使って情報を共有し、孤立地域に防災ヘリで物資を運ぶ手順を確認。災害対策本部長の知事も「シチュエーションルーム」で対応を検討。県民への呼びかけに臨んだ
▼一方緊急提言書は、線状降水帯発生に伴う住宅浸水や道路冠水を踏まえ、排水設備の整備や河川に堆積した土砂の撤去、国の排水ポンプ車の伊勢志摩地域への配備を要請。内宮周辺の冠水を受け、砂防堰堤の整備を求めた。スマートな図上訓練が想定しない被害の現実ばかりと言えようか
▼図上訓練は今後ますます洗練されるに違いない。「予想が難しい線状降水帯を想定した」のが今回の価値と三重大の川口淳准教授。中身よりテーマだ。短所は「同じ場にいない職員との危機感の共有が薄かった」。実地訓練の欠陥が拡大傾向にあるということか。