三重県津市は死亡した人の遺族が行う各種申請・手続きを支援する専用窓口「おくやみ手続きサポートデスク」を本庁に開設した。これまで各課での手続きが必要だったが、ワンストップで実施できるようになった。また、専属スタッフ「おくやみコンシェルジュ」を配置。専用窓口を設けることで大幅な時間短縮が可能となり、遺族の負担軽減につなげる。市によると、専用窓口は県内5市で開設されているが、コンシェルジュの配備は県内初という。
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死亡の届け出に伴う各種手続きについては、どういった手続きが必要なのかが分りにくいという声や、本庁の場合、多くの窓口を回るため時間がかかったり、申請に必要なものがそろわずに2度手間になったりといった意見が寄せられていた。
市の死亡届出件数は3カ年平均で年間約3400件で、うち各支所を除く本庁に届けられるのは6―7割の約2100―2400件ある。
そこで市では先月1日から、本庁に必要な手続きをワンストップで実施できる専用窓口を設け、遺族の負担軽減につなげることにした。具体的には、遺族が手続き当日、市で対応可能な26の事務手続きについて、専用窓口で一括で済ませられるようにした。この間の所要時間は約1時間以内を見積もっている。
手続きの流れは、遺族が死亡届を提出した後、サポートデスクを利用する前日の午前中までに電話予約すれば翌日から実際に手続きができる。これにより、死亡届を提出後、最短で3日目で手続きが完了できるようになる。
時間短縮などが可能となるのは、死亡届が提出された後、事前にリストを作成し、関係各課が必要な手続きを調査して手続き前日までにリストに基づき申請書類を準備しておくためだ。事前に市側で必要な手続きを調べておくことで、電話予約の際に、利用者に本人確認書類など申請に必要な持ち物を伝えることもでき、書類がそろわないといった理由で手続きが二度手間になることも避けられる。
ワンストップで手続きできる市の26事務は世帯主の変更や印鑑登録証の返納、葬祭費の支給申請、国民健康保険の資格喪失届、国民年金や介護保険に関する各種手続きなど。
専用窓口は月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで開設し、1利用当たり1時間の枠を設け、予約できるようにしている。また、外部から人を雇い、専用のコンシェルジュを配置。事務的になりがちな応対を回避し、市以外の手続きをサポートしたり、さまざまな相談にも応じるようにする。コンシェルジュは弔意を表すため黒い服を着用するなどしている。
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開設から1カ月たち、1日現在の利用件数は約65件。利用者からは「これまで半日以上かかったが、1時間で終わったのは良かった」、「電話予約の際、事前に必要な物が分かるため、安心して手続きができる」といった声が寄せられた。コンシェルジュとの応対では、「話し相手になってもらい、寂しい気持ちが和らいだ」といった声もあったという。
一方、1時間の枠内で素早く完了できる反面、高齢者などからは「慌ただしい」といった意見もあったという。高齢者の場合、手続きの説明や内容把握に時間がかかることもあり、市民課では「利用時間について、臨機応変に対応していきたい」としている。
前葉泰幸市長は「大切な家族を亡くされておつらい中で、いろんな手続きを次から次へとやらないといけない。なるべくスムーズかつ短時間でできるようにしたい」と話している。