▼精神障害児(者)施設として県が昭和51年設立し、平成18年に外郭団体厚生事業団に移管した「県いなば園」でまた虐待事件が発生した。令和3年に発覚した前回は入所児童に日常的に厳しい言葉で指導したなどで県が心理的虐待と認定、施設長は職務放棄のネグレクトだったとされて厚生事業団は昨年3月、30ページ余にのぼる「同園虐待防止改善計画」をまとめたばかり
▼事業団理事長名で出された「お詫(わ)び」にはそのことに触れていないが、担当者は取材に「再発防止に取り組む中で事案が起こり」と謝罪したらしい。どこかちぐはぐ感があるのは、前回の事案も一人一人のマネジメント力向上計画が緒に就いた段階で発生していたからか
▼顔に靴跡がついていたと報じられたが、県の認定は心理面と管理面の指摘だけに終わった。介護途中にベッドから一緒に落ちて傷つけたという職員の釈明を信用した形だが、再発防止策に影響してはいないか。今度は防犯カメラにはっきり暴行の様子が写っていたことが、そのことを物語っている気がする
▼連絡や報告の習慣がなかったと「改善計画」にはある。風通しの悪さとともに、隠ぺい体質だったことがうかがえる。暴行の事実をうやむやにしたままでは、そんな体質も継続していたのではないか
▼いなば園は、福祉部門が専門職の趣が強かった当時の県職員が心血を注いで作り上げた。退任後、再就職先の園長を先取りされたと悔しがったものだ。北川改革の人事交流で福祉の専門色は薄まった。再就職先も、県での地位で割り振られる
▼現場は分かりにくかろう。