伊勢新聞

2023年9月2日(土)

▼地球温暖化による異常高温が続いている。温暖化は地上だけではなく海中でも起こっていて、日本の漁業は危機に瀕している。原発の処理水排出は風評被害だが、こちらは完全な実害である

▼県の場合、鳥羽、志摩両市の海女漁が壊滅状態になった。漁業者が「磯焼け」と呼ぶ、カジメなどの海藻がなくなる海の砂漠化が進み、海藻を餌にしているアワビやサザエがいなくなったからだ。県によると最盛期に約750トンあった県内のアワビの漁獲高は、30トンほどに落ち込んでいる

▼磯焼けは全国各地の海岸沖で起こっている。原因はウニや植食性魚類が海藻を食べ尽くしたからだが、本当の原因は温暖化による海水温の上昇と海洋酸性化だ。志摩半島周辺の海水温は近年黒潮の蛇行によって高まり、今年は異常に高い。EUの気象情報機C3Sは世界の平均海面水温が7月下旬に観測史上最高を更新したと発表した

▼海水温の上昇は冷たい海を好むサケやサンマの不漁などのほか、記録的集中豪雨や台風の大型化を引き起こしている。このままいけば、じきに日本産のアワビやサケなどは食卓から消えるだろう。