伊勢新聞

2023年8月24日(木)

▼災害時の安否不明者や行方不明者の氏名を原則公表する新方針について、県防災対策部は「捜索の対象者を絞り込め、迅速な対応」につながる、と。同感。立派。国が安否情報公表を各自治体に呼びかける前にそうしていたら、もっと立派だった

▼個人情報保護と公共の福祉との調整は、県でもしばしば問われてきた。県が見直し検討を口にするなどの問題に発展したのは、やはり感染症の関係で、平成31年1月からのはしか(麻疹)の流行だ。民間団体の研修が発生源と県は早くに突き止めていたが、公表の理解を得るのに手間取り、被害が県内外に拡大。過ちを認め、公表基準見直しに着手した

▼新型コロナ感染拡大で、見直しが生かされることはなかった。クラスター(感染者集団)施設は了解が得られていないとして公表せず、代わって、水面下で自ら公表することを強力に指導した。結果として差別現象が起きても責任はそちらでということだ

▼災害対策時の方針は、震度5以上の大規模災害に限って安否不明者らの氏名などを公表するという令和2年の基準が微動だにしなかった。各自治体の公表のばらつきを受け、国の個人情報保護委員会が一元監督する改正個人情報保護法が成立したのが一昨年5月。同7月の熱海市土石流災害に後押しされ同9月、都道府県に氏名公表の検討を促した

▼それから1年。県の見直しは全国に先駆けたかどうか。そうであれば、検討しなければならない事例が多くあった成果に違いない。そうでないとしても「過ちては改むるにはばかることなかれ」(孔子)。やはり、立派。