伊勢新聞

2023年8月21日(月)

▼写真家の斎藤陽道さんが本紙に連載しているコラム『とある見るひと』で、4歳と7歳の2人の子どもの言語能力の高さに感嘆していた。斎藤さん夫婦がろう者のため外国の映画をビデオで見るのに日本語字幕は欠かせないが、日本語吹き替えのない作品でも子どもらは難しい漢字を理解しているという

▼映像や文脈の流れから言葉を読み取っていくらしい。筆者にも覚えがある。程度の違いはあるが、学校で教わっていない漢字を読んで、周囲を驚かせていた

▼「10で神童15で才子20過ぎればただの人」という。自分はそれぞれもっと早かった気がするが、ともあれ子どもの能力、外界の吸収力は素晴らしい。「それぞれの方法で自分の言葉に翻訳している」と斎藤さん。本年度の全国学力テストで、県内の結果は中学の数学を除く4教科で全国平均を下回った

▼小学校は全国平均との差を縮めたが、中学校の国語、英語は広がった。急速に「ただの人」になっているか。全国的には、英語の「読む」「聞く」「書く」「話す」のうち、「書く」と「話す」が低迷し、特に「話す」の平均正答率は12%だったが、県はどうだったのか

▼海外ドラマなどを見ていると英語と日本語では、発想法に違いがある。日本人ならば肯定的に表現するところを英米人は否定から入る。読み聞くより、書く、話すが苦手になる原因かもしれない

▼読書などの時間も全国を下回る。県教委の学力向上推進プロジェクトチームは、記述式が改善したが「漢字などの基礎的な知識に課題」。文脈から理解する力に問題があるということだろう。