▼「動物虐待」の批判がある多度大社の県無形民俗文化財、上げ馬神事について、県教委は安全管理の徹底などを求める勧告を多度大社に出した。動物愛護管理法の順守や馬を威嚇する行為の根絶などとともに実施主体を明確にすることも求めた
▼学識経験者らでつくる「県文化財保護審議会」が県教委から諮問を受けた建議で、文化財保持は多度大社が担い、上げ馬神事自体は氏子らでつくる「御厨総代会」が主催していることで「ガバナンス(統治)が行き届いているとは認めがたい」。これを受け、勧告は「神事全体の管理が十分だとは認めがたい」
▼要は、責任の所在があいまいだということだろう。改善を求めるにも、誰に言えば徹底されるのか、県教委側としても管理上、あぐねることがあったのかもしれない。この際、管理しやすい組織に改編させようという意図もあるか
▼祭りの踊りや演奏、武芸などの披露は、もともと神仏に願い事をした謝礼として氏子や檀家が奉納してきた。神事は神社が神への願い事として行い、感謝の神輿(みこし)や山車、貢ぎ物などは氏子などが捧げるのが、日本中で繰り広げられている奉納行事の本質で、坂上がりの成否で作物の吉凶を占う上げ馬神事もまた、奉納行事の一つに違いない
▼二元統治は日本の祭り共通の特質。ガバナンスや神事全体の管理という一元統治の視点から改組を強いるのは、日本の伝統文化を否定することにならないか
▼虐待問題で「文化財保護を所管する県教委として重く受け止めている」とコメントした福永和伸教育長だが角をためて牛を殺してもなるまい。