▼記者会見に臨むに当たって初の一見勝之知事のマスク姿か。直前に外す姿はたびたび目にしたが、6日に新型コロナウイルス感染が確認され「少なくとも5日間」の自宅待機期間が明けて3日目。外すだけの心の余裕はなかったと見えるが、泥棒を捕らえて縄をなうのことわざが頭をよぎったのは申し訳なかった
▼知事の感染が確認されて2日後、五類移行後10週続いていた増加が初めて減少に転じた。知事と相性が悪いのか、知事の感染で県民にアナウンス効果が広がったか。ともあれ、沈静化とはほど遠いコロナに熱中症。そこへ台風6、7号が到来し、うち7号は直撃。3日後にブラジル訪問を控え、知事もおちおち自宅待機してはおれまい
▼ブラジルは昨年まで、マスク嫌いのボルソナロ大統領が率いていた。3年前、公共の場でマスクを着用しないのは条例違反だと連邦裁判所から着用命令を受けたが、一向にひるまない。7回罰金が科せられ、総額3千万円以上にのぼったとされるが、背景にはマスク嫌いの国民性もあるともいわれる。知事としては着脱に迷う場面もあるのではないか
▼経営の神様としてこのところ評価の高い京セラの稲盛和夫は泥縄の推奨者だったらしい。設備投資の準備などはせず、必要が生じてから取り組めばいいという考えだ。予測は楽観的になりがちだし、景気は常に変動する。たとえ後手後手に回ろうとも、いつか来る不況に常に備えながら経営すべきというのである
▼企業と行政の違いを端的に物語るが、泥縄の反語、備えあれば憂いなしでは共通しているようなのがおもしろい。