伊勢新聞

<まる見えリポート>松阪市長選と市政課題 最重点の人口減少対策 子育て支援など取り組み

【市長選を知らせるのぼりが立つ松阪市役所】

任期満了に伴う三重県の松阪市長選(8月27日告示、9月3日投開票)は今のところ、3選を目指す現職の竹上真人氏(60)の他に立候補の表明はない。無投票の公算が大きい市長選と市政課題を展望する。

竹上氏は2月15日、市議会定例会で本年度当初予算案を説明し、「これからも『スピード感』と『独自性』を追求していく」と訴えて締めくくり、続けて「本格的な人口減少社会を迎え、次の世代への循環を支えるしっかりとした政治が必要。市長選に再度挑戦する。さらなる改革に取り組んでいく」と出馬表明した。

公約集のスローガンは初当選が「子育て一番宣言!」で、再選が「継続プラス進化!」。今回は「育てる まもる のばす」を掲げる。人口減少対策を最重点に置いている。

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 同市は6月15日開会の市議会定例会に、夏休みなど長期休業中限定の放課後児童クラブを、モデルの小学校1校で運営する事業費を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を上程。利用者募集のため同日の議決を求め、可決された。

4月に実施した市内36小学校の保護者調査では、「長期休業中のみのクラブ利用が可能となれば利用したい」の回答がクラブ利用者(16%)の43%を占め、クラブ未利用者(84%)でも37%に上った。「ニーズが多いことから新たな子育て支援対策を急ぐ必要がある」と判断して始めた。「スピード感」はあったが、周知期間が短かったためか、夏休みの利用は定員の半分以下にとどまった。

また同市は、仕事と子育ての両立が望める職場環境を整備した事業者を厚生労働大臣が認定する「くるみん認定」の事業者を増やすため、同認定を取得すると30万円交付する奨励金を設け、来年3月22日まで申請を受け付けている。県内初の「独自性」ある取り組みだが、県内の認定事業者(昨年末)が43社ある中、同市はゼロという事情がある。

10月26日には「企業と子育てママパパ達との逆! ドラフト会議」を開く。子育て世代の前で自社をアピールする場をつくり、続いて合同面接会を開催する。

同会議で進行役を務める「子育て応援プロジェクト☆パイン」の酒井由美代表は、職場に出向いて女性社員から職場の困りごとや仕事と子育ての両立など悩みを聴き出し、経営者に改善を提案する「出張カフェヒアリング」を実施している。酒井代表は「女性社員が自分の会社を好きになれば、素晴らしい力を発揮してくれる」と語る。

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 竹上氏は県職員を経て平成15年に県議選に初当選し、3期目の同25年に市長選へ立候補して落選した。同27年の市長選で初当選を果たし、令和元年に再選した。

平成25年の市長選は現職の山中光茂氏と一騎打ち。山中氏が4万650票で再選し、竹上氏は3万2727票で敗れた。

山中氏の辞職に伴う同27年の市長選は三つどもえ。竹上氏が2万5935票を獲得し、山中氏後継で元市職員の梅本陽子氏と森本哲生元衆院議員を振り切った。次点とは1506票の小差で、得票率は37%だった。

令和元年の前回市長選は夫が市議の海住さつき氏と争い、得票率70%のダブルスコアで再選を飾った。

山中氏は重要案件について市民討論集会を開く政治手法で大きな印象を与えた。「市民と直接対話 市長自ら数百回にわたり地域で懇談」の実績を引っ提げ、初挑戦の竹上氏を破った。

竹上氏にとって2期目最後の市議会定例会の閉会後、正副議長と記者との懇談で、米倉芳周副議長は「山中氏は新鮮だった。毎日が選挙活動と自覚して市民対話を取り入れていた。竹上氏はそこから学んだ」と話した。

竹上氏の今回の公約集も「松阪市内の隅々まで出向いて市民の皆さまの意見を聞きました」「地域に出向いた回数2500回!」「地域との懇談会300回突破!」と実績を誇る。

一方、山本芳敬議長は「篠田山斎場の大規模改修・休止の議会報告は唐突だった。市街化調整区域の地区計画制度活用は記者会見で初めて知った」と市の議会対応に渋い顔を見せた。

山中氏は平成26年、市議会で図書館改修関連議案が再否決され辞職を表明し、市議会解散請求(リコール)の不成立を経て、翌27年に辞めていった。学んではいけない側面もある。