伊勢新聞

2023年7月26日(水)

▼「分割して統治せよ」という。被支配者を容易に統治する手法として、古くは古代ローマが支配下の都市相互の連帯を禁じ、処遇に格差をつけて反乱を抑えたことで知られ、その後の植民地政策や、現代の政治にも応用されている

▼日本でその例を示せと言われて真っ先にあげられるのが教育現場ではないか。学校は、基本的に教員免許を持った教員と、そうではない職員の二重構造。学校行事などで同じ準備をしていても、教員は給与特別法で残業代なし。職員はありが教員の不満。残業命令を出すべきだと校長を突き上げるが、応じては教育委員会からにらまれる

▼教育現場のもう一つの“分割統治”は正規教員と非正規教員の別。定数で縛られる教員の“抜け穴”として多用されてきたが、あくまで“臨時”の措置と説明するために給与体系をまったく変えた。授業を時間単位のコマ数にして支払うのもそのひとつである

▼非常勤講師らでつくる労働組合「みえ教育ネットワーク教職員ユニオン」が、残業代を支払っていないのは違法だとして、県教委に支払わせるよう県人事委員会に措置要求した。非常勤講師の時間外労働について定めた内規はないというのもコマ数同様、分割統治の表れである

▼県教委教職員課は「一般論として、学校は非常勤講師に残業を指示していないことから、残業は発生していない」と言ってのけたそうだ。残業を指示しないのは県教委の意向を恐れる学校長も同じだが、4%の調整額だけで残業代を出さないのはおかしいという全国の正規教員にはむろんそんな非人情なことは言えまい。