伊勢新聞

2023年7月21日(金)

▼「(新型コロナ感染死者数を)国もどっかのタイミングで発表する可能性はあるってことですか。ここで聞くのも申し訳ないけど」と一見勝之知事。県医療保健部が「コロナということではなく、死者全体の中でコロナ(死因)が増えていくか分析することになるかと思います」

▼6月28日の記者会見で、コロナへの対応を問われて、にわかに始まった知事と医療保健部とのやりとりである。死者数が把握できないのに「死者が増えれば県民に知らせた方が良い」と答えるなど、珍問答が続いた

▼県が突出して何かやるか調整してみると答えて約1カ月。何の音沙汰もない中で、新規感染者数が九週連続で増加している。確保病床を8床増やして447床にしたのが4日。19日は、1床増やし449床。きめ細かな対応といえるのかもしれないが、余裕のなさを感じなくもない。日本の病院は、数こそ欧米に比べて見劣りしないが、実質民間病院が支える

▼コロナで沙汰止みになったが、整理統合が国によって進められた。そう影響はないという判断もあったのだろう。コロナ禍では急性期医療を扱う公的病院に診療が集中し、医療ソースがひっ迫。質量ともに低下したとされる。病床数確保もその例外ではない。県の要請を断りながら、病床確保料を請求した病院があった、というのもその辺の消息を物語ろう

▼病院の役割分担の明確化、提供体制の確立、人材養成の急務が、コロナ禍の教訓と県医師会の情報誌で中堅医師が提言していたが、第九波の声も上がる中で、県の備えは、のど元過ぎた感が否めない。