2023年7月18日(火)

▼「通告時点の判断として間違っていなかった」と、県児童相談センターの中澤和哉所長は言ったという。ただやるべきことをやらなかった。AI(人工知能)と違って心のある人間の気持ちは変化し、うそもつく。「通園が途絶えた時点で津市と方針を共有し、リスクに応じて対応を変える必要があった。認識が甘かった」。変わるはずがないと思ったということでもあろう。人間に心があることを忘れていたに違いない

▼津の4歳女児暴行死事件についてである。桑名市の母親によるパチンコ店駐車場放置死事件、四日市市の母親による虐待死事件、鈴鹿市の母親の内縁の夫による重篤虐待事件など、11年前に立て続けに起きた児童虐待事件を受けて県児童相談センターは設立された。2度と虐待事件を起こさないための最後の砦として、各児童相談所の上位に位置づけ、センター長は部長級を宛てた

▼桑名市の放置死事件は父親が責任を持つという要望で乳児院からの一時外出を許可した間の悲劇だった。鈴鹿市の重篤虐待事件は通園が途絶え、小学校へ通う姉兄の訴えを放置した中での出来事。外国人児童の場合など、通園が途絶えるとともに退園措置が執られた

▼そのころの児相の方針は児童をいかに家庭に戻すかだった。そのため親との信頼関係に力が注がれたが、県児相センターの初代所長は親と引き離すことを強調した。県検証委員会の佐々木光明委員長が「子どもの視点に立って事実を確認し」というのも子どもの命の視点が第一ということだろう

▼11年前のスタート台に関係者が再び立つことになった。