伊勢新聞

2023年7月12日(水)

▼生成AI(人工知能)の議論はさっぱり分からぬが、AIを身近に感じるのは将棋だ。日曜日のNHKの同杯テレビ将棋トーナメントは、AIの形勢分析と次の1手が3通り表示される

▼解説者のプロ棋士も感心する手がほとんどだが、時折「これは人間には指せませんね」という手も登場する。対局するのは人間同士。心理を揺さぶる手が功を奏したりする。藤井聡太七冠はAI世代といわれるが、そんな時代の到来をいち早く予言した羽生善治九段はAI全能を否定し、予測外の戦法に誘導していく

▼津市の4歳女児暴行死事件で、県は一時保護しなかった理由について「AIの評価結果を参考にした」。面会や年齢などの基本情報に加え、けがの場所や状態など21項目をシステム化。結果は、一時保護の割合は「39%」で、「感覚的にもしっくりくる評価。決して違和感のある数値ではなかった」

▼面会していないことや、母親が児相に協力的と判断していたが、実は不信感を募らせていたらしいこと。11年前の虐待死事件で県の検証委員会は、外傷の有無や両親の協力姿勢などを過度に評価しないことを提言して児相職員のスキルアップを求めたが、AI導入でますます人間らしさを失ったのかもしれない

▼コンピューターが未来を開くといわれたのは昭和40年前半。企業のコンピューター部門担当者は「夢のような時代だった」と振り返る。コンピューターの都合と言えば何でもまかり通った。10年後「人間が分かるように書き直せといわれる」

▼AIもシステムの出来が問われる時代になるのではないか。