▼「人は見たいものしか見ない」は古代ローマの英雄シーザーの言葉。転じて「人は自分の望むものを信じたがる」
▼生後10カ月の女児が母親に頭部を殴られて死亡した平成24年の虐待死事件で、5月に月1回訪問の経過観察対象にした四日市児童相談所が、事件発生の10月までに父母、女児に会えたのは9月7日の1回だけだが、その前の8月29日の訪問は居留守を使ったことが裁判で明らかになっている
▼9月7日は母が玄関先で対応。女児の発達速度の懸念などが語られ、父が女児を抱いて表れ、母があやすと泣き止んだ。児相は3日後、女児に問題はないとして経過観察を3カ月に1回に切り替えた
▼津市の4歳女児の傷害致死事件では、虐待情報を中勢児相に伝えた保育園に不信感を持ち、昨年7月から登園させなくなった母親が、園からの電話での聞き取りに「(子どもが)いつか園に戻りたいと思っている」などと語り、今年1月に家庭訪問した保育士は、元気に外で遊ぶ女児を確認したという。園の女児の安否確認はこれが最後となった
▼11年前の四日市市の虐待死事件で、県検証委員会は、9月に初めて女児に会えた時が重大だったと指摘している。表面的観察でのステレオタイプの判断ではなく、専門家や周辺の情報収集が必須だ、と。経過観察を3カ月に1度にした児相は、見たい景色を見たといえようか
▼今回の津市の事件では、児相は、3カ月に1度の間接情報の聞き取りだけ。家庭訪問はしていなかった。見たくない景色は見なかったといえようか。