伊勢新聞

2023年6月30日(金)

▼40年近く昔になるが、鳥羽市に助役として出向した県職員が憎々しげに言った。「市職員は、気にくわない指示や業務命令を受けると、議会と一緒になって反抗してくる」

▼議員と職員の関係が県などとは比べものにならないほど濃密で、縁の薄い県職員では、上司風を吹かせても思わぬ方向からの攻撃で、たちまち恥をかかされたりすることがあるらしい

▼労組の役員選出に使用者側が介入したとして、伊賀市職員が県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。職員が務めていた労組委員長を別の職員にするよう上司の上下水道事業管理者が市幹部に指示したという。そのため組合役員を退任になり、所属も上下水道部から建設部に異動になった、という申し立てだ

▼仮に不当労働行為が認定されたとすると、近頃珍しい露骨な組合つぶしだが、そうまでしなければならない公営事業側と労組との間の対立があったかどうか定かではない。代わって、元委員長が訴えているのは、長時間労働で上下水道部が平成29年以降、伊賀労基署から5回にわたって是正勧告を受けていること。それについては、市議と組んでの元委員長の活動があったらしいこと

▼上下水道事業管理者らがどんな思いでこのタッグを見ていたかは想像に難くない。元委員長自身「私への腹いせや報復。労働者の権利を踏みにじる行為」と批判。不当労働行為とは別だが、それはそれで問題である

▼県も、議会と協調して労組の特権的労働慣行を是正したことは少なくない。労組はもちろん議会自身も、協調しているとは夢にも思わなかった。