伊勢新聞

2023年6月17日(土)

▼最近、日本語がおかしい。言葉と現実が一致しない。真実味が全くない。その典型が「異次元の少子化対策」だ。異次元と言うからには、これまでと次元が違う大胆な政策かと思いきや「低次元」に過ぎなかった

▼岸田首相の言葉はあまりに軽い。「新しい資本主義」「新・所得倍増」はどこに行ったのか。「検討します」が口癖のため「遣唐使」と揶揄(やゆ)されたが、その反論は「議論を進めて行くべきところはしっかり議論を行うんだということを申し上げている」。この「しっかりと」も多発され、虚辞化している

▼首相がこれだから、いまや「軽言病」は日本中にまん延。政治家は「高い緊張感を持って」「誠心誠意で」「前向きに」「まい進していく所存です」などを多用する。ことが起これば、「秘書が…」「記憶にございません」「誤解を招いたのであれば申し訳ない」「再発防止に努めます」のオンパレード。これは、民間も同じ。とくに、事件、不祥事後に「再発防止」を聞かない日はなくなった

▼ヨハネによる福音書にこうある。「初めに言(ことば)があった。言は神と共にあった。言は神であった」