2023年6月7日(水)

▼窃盗症(クレプトマニア)というれっきとした病気もある。サスペンスドラマなどではおなじみで犯人は女性。気づいた時には盗んでいる。ドラマの陰影となり、深みを増す。被害者側の店などで捕らえられ、警察に通報されるパターンがほとんど。事件の重要人物となって、自宅などの捜索を受けることもある。机などの引き出しから新品の歯ブラシなどが大量に発見されたりする

▼伊勢市の50歳の女性主事が、窃盗容疑で1月に逮捕されていて、市から停職6月の懲戒処分を受けた。逮捕事案は、市内のドラッグストアでの歯科衛生用品6個(約3800円相当)。6個の内訳は分からぬが、同じ物、あるいは不要不急品なら異様感がある。津市内のコンビニ店で化粧品(約300円相当)を万引した過去があり、課内の同僚6人の財布から現金計約4万8千円を盗んでいた

▼逮捕された女性主事は起訴猶予処分だった。謝罪を口にし、市担当者は「今後このようなことがないよう綱紀粛正を徹底する」。ドラマの窃盗犯もおおむね説諭などで釈放される。生理が影響したとされることはあるが、原因が深く追求されることはほとんどない

▼が、仮に窃盗症だとすると精神障害の一つで、監視などや規律の強化などの対策は効果がないという。いわゆる依存症の一種で、窃盗品は少額であることが多い。窃盗自体、対象商品を取得することが目的ではなく緊張感、成功の満足感。なぜこんなことを、と本人自身、驚いたりする。治療の問題である。機能不全に陥った環境や、トラウマ体験などが、共通の背景としてあるという。