伊勢新聞

<まる見えリポート>デマンド型交通の導入検討 鈴鹿の玉桜まちづくり協議会 三重

【チョイソコのシステム概要について説明を聞く近隣住民ら=鈴鹿市東玉垣町の東玉垣町集会所で】

三重県鈴鹿市玉垣地区の玉桜まちづくり協議会(水野克則会長)で、地区内を運行する予約型乗り合い送迎サービス(デマンド型交通)の導入に向けた実行計画案づくりが進む。市自治会連合会会長も務める水野会長は「市全体のモデルケースになれば」と意気込むが、運営資金の問題など課題もある。

玉垣地区の世帯数は現在、約1万世帯。地区内には路線バスなどの公共交通も運行するが、一部には駅やバス停から一定以上の距離がある交通空白地域も存在する。高齢者数も増加していることから、同協議会は「長期的な将来を見据えた交通弱者対策を検討していく必要がある」として、昨年秋ごろから本格的な取り組みを始めた。

現在、検討の中心となるのは、愛知県刈谷市に本社を置く自動車部品会社、アイシンが提供するAI(人工知能)を活用した配車システムを使った乗り合い送迎サービス「チョイソコ」。事前に会員登録した利用者が乗車予約すると、専用システムが最適な乗り合わせと経路を計算し、目的地まで乗り合い送迎する。利用者は乗車料金を支払って乗る。

地域の自治体や企業などがエリアスポンサーとなり、停留所として設定することで、協賛金として運営費の約8割程度をまかなう仕組み。6月2日現在、全国の53自治体で運行し、県内では明和町が導入する。

5月7日、同市東玉垣町の東玉垣集会所で同協議会による説明会があり、近隣住民約30人が出席。出席者からは「会員数がどれくらい集まったらスタートできるのか」「運行範囲や料金はどうなるのか」などの質問が出された。

同協議会側は「先行地では千人くらいでスタートしている」「玉垣地区内を中心に、原則は半径3―5キロを考えている。料金は今後の検討課題」と答え、水野会長は「市がデマンド交通を始めようとしている。取り組みは行政の補助がないと厳しい部分もある」と現状を説明した。

1台運行させるための必要経費は、年間で約1800万円。将来的に事業を継続していくために、費用をどう捻出するかは大きな課題となる。チョイソコ以外の民間企業によるデマンド交通システムも選択肢の視野に入れ、検討は進む。

一方、市は既存の公共交通での対応が厳しい移動ニーズに対応する地域組織に向け、手順や市の支援をまとめた手引書を年度内に公表するほか、一般会計補正予算案の中に新交通システム運航事業費として1235万6千円を計上し、5日の市議会6月定例議会で上程。年度内にデマンド交通システムの実証運行に向け、地域の意向調査や導入地域の公募選定に取り組む計画という。

今後、同協議会が市の提示する具体的な制度設計や公募条件を満たし、実証運行の導入対象地域となれば、費用面の問題は大きく前進する。しかし、制度設計自体はこれからで不確定要素も大きい。

7月以降に住民対象のアンケートを実施し、具体的な需要ニーズの調査や大まかな収益率を算出する計画という。

水野会長は「市の今後の方向性を踏まえ、ベストな選択肢を考えたい」と話した。